1-2 MVVは企業のDNA

2021年5月5日

MVVは企業のDNA.1.意思決定の質が高まる。2.持続的競合優位性が高まる。4.組織が団結力が高まる。5.プロダクトの訴求力が高まる

MVVは実務の強力な武器

1.意思決定の質が高まる
2.持続的競合優位性が高まる
3.人材採用力が高まる
4.組織の団結力が高まる
5.プロダクトの訴求力が高まる

1.意思決定の質が高まる

明確なMVVがあるCXOなら、課題に直面したときや選択が「我々のMVVに即してどちらが適切だろうか?」と考えるこができる。MVVがあれば意思決定の迷いが減らせる。
選択の費用対効果、チームメンバーのお得感、愛着心への影響、ステークホルダーへの説明責任などを果たすことができる。
これがMVVに立脚しない意思決定なら、一貫性を損ねてしまうことになり、中長期的に自社の強みや競合優位性を失ってしまうリスクがある。

2.持続的競合優位性が高まる

独自の価値提案に基づくMVVがあると、商品やサービスに対する持続的競合優位性も高まる。

機能的で最先端のテクノロジーのプロダクトは、徹底的に分析すればコピーできてしまう。
しかしCXOが築き上げてきたストーリーをもとにしたMVV、それに即したプロダクトは、簡単にはコピーされない。
なぜなら、MVVとは経営者の生き様であり、こだわり、哲学が色く映されているもので、さらに同じ年月と熱量をかけなければコピーができるものではない。
独自のMVVが、その企業独自の「ストーリー」の構築につながり、中長期的に見て持続的競合優位性をもたらすのだ。

3.人材採用力が高まる

スタートアップがスケールできない最も大きな原因の一つが「優秀な人材が採用できないこと」だ。
特にPMF(自社のプロダクトやサービスが、あるマーケットに適合している状態)を獲得した直後の課題は、優秀な人材を採用できるかに尽きる。
ITネイティブの若者の採用難といわれる現代で、「優秀な人材確保」はスタートアップの命運を決める。「採用」については「誰をパスに乗せるか」という有名な一文がある。
誰を乗せるべきかはエントリーマネジメントと呼ばれ、MVVがあれば非常に明確になる。

最初に見るべきポイントは「ミッション、ビジョンへの共感が高いかどうか、会社が打ち出すバリューに沿ったスタンスや態度を持っているか」だ。
最も欲しい人材は、「スキルが高くて、MVVへの共感が高い人物」だが、このようなハイスキル人材は、市場価値が高く競合するので、なかなか見つけることができない。
そうなると、スキルは高いがMVVへの共感の低い人材を採るか、MVVへの共感は高いがスキルがそこまで高くはない人材を採るか、という二者択一を迫られる。
スタートアップは慢性的に人手が足りないので、即戦力になる人物を採用したい。
こうした場合、「MVVへの共感は低いが、スキルが高い」に該当する人に魅力を感じることはよくある。

しかし、単にスキルが高い人材が必要ならば、外注が業務委託でも十分対感できる。その方が人件費を変動費にできるので、事業継続のリスクを下げることにもつながる。
コアメンバーとして一緒にく人材の場合には、「スキル」よりも「MVVへの共感」の高さを優先させ、将来の幹部社員となる人材を育てていくべきだ。
MVVはスタートアップの活動の全体の土台になっている。
MVVが明確だと、戦略が明確になり、「誰をバスに乗せるか」を決めるエントリーマネジメントが機能する。
そういったメンバーは、エンゲージメントが高くなり、商品やサービスに魂を込めて仕事ができるため、カスタマーへの対応も格段に良くなる。
結果、顧客の定着は高まり、財務パフォーマンスも良くなり、「正のスパイラル」が起きる。

一方で、MVVを不明確な状態で放置すると、戦略も不明確になり「誰をバスに乗せるか」を決めるエントリーマネジメントが機能しなくなる。
結果、エンゲージメントの低いメンバーが集まり、商品やサービスに魂を込めることができないため、客への対応も悪くなる。
そして、財務パフォーマンスも落ちてしまい、「負のスパイラル」に陥ってしまう。

4.組織の団結力が高まる

バリューについて、徹底的に検討を行い答えを出しておかなければ、組織のあらゆる階層の者が互いの違いに気づくことなく、反対方向に向かって努力を続ける。
スタートアップはPMFを達成し、資金調達しスケールフェーズに入ると一気に人数が増える。
それまで数人規模の組織が、一気に数十人、数百人や場合によっては数千人に影れ上がる。

一般に経営者が直接コミュニケーションを図れるのは30人までが限界と言われている。それ以上の人数になると意思の疎通ができなくなる。
その状況に威力を発揮するのが「MVVによる訴求力/求心力」だ。
経営陣は、「使命感」や「事業の意味」を念頭におきながら、日々仕事をしているし、その周囲にはこの熱量は自然に伝播していく。
しかし、会社が大きくなるにつれて、熱量が段々と届かなくなってくる。
そうなる前に、熱量を届ける仕組みが必要になる。

例えば、1on1ミーティングのときなどにも「我々にはこういうビジョンがある。あなたならどう貢献したいのか?」という当事者意識を高めながらのコミュニケーションが可能になる。
つまり、経営が直接、会話することができない(もしくは、その機会が少ない)メンバーが増えてきたら、「大義を達成するための仕事」と感じられる環境を整える必要がある。
MVVは、社内メンバーの気持ちをしっかりとグリップすることにつながり、これにより人材の定着率のアップが見込まれるのだ。

5.プロダクトの訴求力が高まる

どのようなプロダクトを打ち出した後でも、MVVは進化させていく必要がある。
絶え間なく変化する外部環境の中で、自社プロダクトのUX改善や、機能追加に関する意思決定をするときも、MVVとの対話が重要になる。
MVVのフィルターを通ったプロダクトは、どんどん本質的かつ独自の価値を追求するようになり、自ずと、訴求力や魅力が高まってくる。
「現状に挑戦する」という「WHY(なぜ、やるのか)」の追求を示すことで、ユーザーの「自己実現欲求」に訴えかける秀逸なMVVは継承される。

➡ 1-3 MVVの策定へ続く

Posted by startup103